MENU
- Top page
- 経歴
- 授業関係資料目次
- 文系ディシプリン科目(2020前期・木2)
- 学部生演習(2020前期・木3)
- 卒論
- 院生研究(2020・月3→木2)
- 院生特論(2020・月4→火2)
- その他(授業内容に関する FAQ 等)
- TreeDrawer
- 大学院の受験を考えている人に
- 研究活動
- 『統語意味論』
- 統語意味論関連の研究一覧 (2021.02.22.更新)
- 『論文を書くためのWord利用法』(2009.4.16.更新)
- 『生成文法の考え方』 (2005.3.12.更新)
- 『はじめての人の言語学』
- 博士論文 Two Types of Dependency (1998 USC)
- 研究室のメンバー
- その他
(NEWS ・ 『日本語学』掲載論文 ・ 研究費による(共同)研究プロジェクト ・ 活動記録 等)
- オンラインエッセイ
- 「論理的な議論の構築方法について」
- 「generalization を目指して」
- 「いかにして理論言語学は経験科学たりえるか」
- 「研究者のための Word 利用法」
LINKS
|
連載第1回
この「generalization を目指して」について
0.きっかけに出会う
1.目標
連載第2回
2.思いつきを形にする
3.反例を見つける
連載第3回
4.generalization の言い方を吟味する
4.1. 真偽疑問文/疑問語疑問文
連載第4回
4.2. 「か」のある疑問文
連載第5回
4.3. 間接疑問文
5.まとめ
6.generalizationの先にあるもの
|
質問/コメント/意見/感想のある方はこちらのフォームからどうぞ。個別にはお返事できないかもしれませんが、なるべく、このページ上で返答するようにいたします。
「generalization を目指して」 |
第3回 |
4.generalization の言い方を吟味する
いつでもちょうどいい反例を思いつけるとはかぎらない。そういうときには、観察の結果であるgeneralizationの表現の仕方そのものを吟味することによっても、言語の真の姿に近づいていける場合もある。
(5)で述べたように、generalization においては言語全体との関連を示すことが重要である。ここでは、記述の段階における目安として(6)をたてたので、それにしたがって、(17)の Generalization 2 をできるだけ既存の文法用語を用いて書きかえてみよう。
たとえ結果的に既存の文法用語でおきかえることができないということが明らかになったとしても、この作業を行うことには意義がある。ことばを替えると意味も変わる。したがって、用語を置き換えた時点で、厳密には、もとの generalization とは異なった generalization になる。別の言い方であっても容認可能になるはずの例文のグループ・容認不可能になるはずの例文のグループがまったく同じになるならば実質的な違いはないわけだが、たいていは微妙なズレが出てくる。したがって、どちらの generalization の方が適切かということを決定するために、そのズレの部分を調べなければならない。それによって、単に思いついた例文だけを観察しているときには気がつかなかった盲点が見つかることがあるのである。
4.1. 真偽疑問文/疑問語疑問文
では、「疑問語をふくまない疑問文/疑問語をふくんだ疑問文」をそれぞれ「真偽疑問文/疑問語疑問文」という用語に置き換えられるかどうか調べてみる。つまり、Generalization 2 と次のGeneralization 3 を比べることになる。
(18) Generalization 3:
(i) (2)のような真偽疑問文の場合、文末が「だ/である/であった/です」なら容認不可能となり、そうでなければ容認可能となる。(ただし、文末が「です」の場合は語彙差・個人差が大きい。)
(ii) (2)のような疑問語疑問文の場合、文末が「である/であった」なら容認不可能となり、そうでなければ容認可能となる。
『基礎日本語文法』でのこれらの用語の定義は次の通りである。
(19) a. 「真偽疑問文」=未知の部分が事柄の真偽に関わる場合
b. 「疑問語疑問文」=文の要素が未知である場合
疑問語を使わずに文の要素が未知であることを示すことは不可能であるが、疑問語があっても事柄の真偽が未知であることを示すことはできる。たとえば、次のような文は、疑問語をふくんだ真偽疑問文である。
(20) 疑問語をふくんだ真偽疑問文:
a. 誰が来たか知っていますか?
b. どの問題が一番簡単なのか聞かなかったのですか?
Generalization 2 にしたがえば、これらの文に対しては (ii) の条件があてはまるはずであるが、Generalization 3 にしたがえば、これらの文に対して (i) の条件があてはまるはずである。
では、どちらの予測が事実に合っているか確かめてみよう。
(21) 疑問語をふくんだ真偽疑問文のテスト:
a. いつ来るか聞いてみる? [動詞・基本形]
b. いつ来るか聞いてみた? [動詞・ タ形]
c. いつ来るか聞いてみます? [動詞接辞・基本形・ ます]
d. いつ来るか聞いてみました? [動詞接辞・ タ形・ ます]
e. いつ来るか知らない? [イ形容詞・基本形]
f. いつ来るか知らなかった? [イ形容詞・ タ形]
g. *何人来るか未定だ? [ナ形容詞・基本形・ だ]
h. 何人来るか未定だった? [ナ形容詞・ タ形・ だ]
i. *何人来るか未定である? [ナ形容詞・基本形・である]
j. *何人来るか未定であった? [ナ形容詞・ タ形・である]
k. *何人来るか未定です? [ナ形容詞・基本形・ です]
l. 何人来るか未定でした? [ナ形容詞・ タ形・ です]
m. 何人来るか未定? [ナ形容詞・語幹形]
n. *何人来るか問題だ? [判定詞・基本形・ だ]
o. 何人来るか問題だった? [判定詞・ タ形・ だ]
p. *何人来るか問題である? [判定詞・基本形・である]
q. *何人来るか問題であった? [判定詞・ タ形・である]
r. *何人来るか問題です? [判定詞・基本形・ です]
s. 何人来るか問題でした? [判定詞・ タ形・ です]
t. 何人来るか問題? [名詞]
u. *何人来るかが問題なんだ? [助動詞・基本形・ だ]
v. 何人来るかが問題なんだった? [助動詞・ タ形・ だ]
文末が「です」の場合もはっきりと容認不可能になることを除けば、これは(10)と同じパタ−ンを示している。ここで明らかになった以前の盲点は、今まで単文しか観察してこなかったということである。したがって、念のために複文の疑問語疑問文の場合も調べてみなければならない。
(22) 複文の疑問語疑問文のテスト:
a. いつ来ると思う? [動詞・基本形]
b. いつ来ると思った? [動詞・ タ形]
c. いつ来ると思います? [動詞接辞・基本形・ ます]
d. いつ来ると思いました? [動詞接辞・ タ形・ ます]
e. どの人が書いた小説が一番おもしろい? [イ形容詞・基本形]
f. どの人が書いた小説が一番おもしろかった? [イ形容詞・ タ形]
g. どの人が作った問題が一番簡単だ? [ナ形容詞・基本形・ だ]
h. どの人が作った問題が一番簡単だった? [ナ形容詞・ タ形・ だ]
i. *どの人が作った問題が一番簡単である? [ナ形容詞・基本形・である]
j. *どの人が作った問題が一番簡単であった? [ナ形容詞・ タ形・である]
k. どの人が作った問題が一番簡単です? [ナ形容詞・基本形・ です]
l. どの人が作った問題が一番簡単でした? [ナ形容詞・ タ形・ です]
m. どの人が作った問題が一番簡単? [ナ形容詞・語幹形]
n. どの人が歌った曲がグランプリだ? [判定詞・基本形・ だ]
o. どの人が歌った曲がグランプリだった? [判定詞・ タ形・ だ]
p. *どの人が歌った曲がグランプリである? [判定詞・基本形・である]
q. *どの人が歌った曲がグランプリであった? [判定詞・ タ形・である]
r. どの人が歌った曲がグランプリです? [判定詞・基本形・ です]
s. どの人が歌った曲がグランプリでした? [判定詞・ タ形・ です]
t. どの人が歌った曲がグランプリ? [名詞]
u. どの人が歌った曲がグランプリなんだ? [助動詞・基本形・ だ]
v. どの人が歌った曲がグランプリなんだった? [助動詞・ タ形・ だ]
これもちゃんと(15)と同じパタ−ンになっている。したがって、Generalization 2よりもGeneralization 3の方が適切であることがわかる。
|
|