2011 前期(学部生向け)言語学・応用言語学演習 II

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

講義題目

 論文の読み方・書き方

授業目的

 この授業では、入門的な講義とは少し違った切り口から、言語学の研究というものを体験してほしいと思っている。卒論などでは、単に、書かれていることを理解するのではなく、自分で考察を進め分析をしていく能力が求められる。ただ、いきなり「自分なりの分析をまとめて主張する」と言われても、どこから手をつけていいか、迷ってしまうに違いない。この授業では、最近の学術雑誌に載った論文をいくつか取り上げ、研究を進めていく基礎体力をつけることを目標としている。

授業の進め方

  • 授業の前に、各自、予習課題に取り組んでもらい、その週の月曜日までにメールで提出してもらう。(詳しいことは、下の説明を参照すること。)
  • 授業の開始時に、主に前回までの授業内容に関する簡単な復習テストを行う。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。
  • 授業は、最初の3回は講義が中心であるが、第5回以降は、学生による発表が中心となる。
  • 授業内容の一覧は、下の表に示している通り。
  • 原則的に全員、グループでの発表に取り組んでもらう。院生さんが準備を手伝ってくれるので、どの時期までにどのように準備を進めるか、院生さんとよく連絡をとって進めること。

教科書について

 最初の3回の授業では、『論文を書くためのWord利用法』(上山あゆみ)くろしお出版 を用いる。定価は、税込みで 1680円 で、生協にも置いてくれてある。授業で使うのは、初めの3回だけであるが、卒論を書く際にも利用できると思うので、持っていて損はないと考えている。
 第5回以降の授業で使う論文のコピーは、原則的に1週間前に配布する。授業を欠席した人は、次の週の論文のコピーを言語学研究室に取りにくること。

授業内容

(更新日:2011.06.22)
第1回 2011.04.14.
論文 授業の目的と方法の説明
予習課題 なし
第2回 2011.04.21.
論文 論文を書くための Word 利用法(1〜5章)
予習課題 ling01 : メールの件名とファイル名を指定された形式にして、Word 文書を添付すること
第3回 2011.04.28.
論文 論文を書くための Word 利用法(5章)
予習課題 ling02 : 「Usual.dot」をテンプレートとした文書を添付すること(文書の中身は自分の所属と氏名だけでよい)
第4回 2011.05.12.
論文 論文を書くための Word 利用法(5〜8章)
予習課題 ling03 : (i) 「スタイル」の機能が用いてあり、(ii) 例文の自動連番と例文番号参照を含む文書を作成して添付すること(中身は、無意味なものでもよい)
第5回 2011.05.19.
論文 定延 利之 (1990) 「移動を表す日本語動詞述語文の格形表示と,名詞句指示物間の動静関係」『言語研究』98:46-65.
予習課題 ling04: 本文の主旨に沿って、次の(b)の文の容認性が上がる文脈の具体例を挙げなさい。
a. フォークをステーキにさす。
(b) ?ステーキをフォークにさす。
第6回 2011.05.26.
論文 岩男 考哲 (2009) "「ときたら」文をめぐって ---有標の提題文が意味すること---", 『日本語文法』9巻2号, pp.105-121.
予習課題 ling05: 次の「ときたら」文は、本文の主旨によると、「行為の接近」「連想」「評価」のうちどれになるか、それぞれ答えなさい。
(a) まったく、最近の若者ときたら…。
(b) ご飯、味噌汁ときたら、やっぱり麦茶でしょう。
(c) 「明日もまた見てくれるかな」ときたら、元気よく「いいとも!」と言いましょう。
第7回 2011.06.02.
論文 丹羽 哲也 (2005) 「名詞述語文,形容動詞述語文,ウナギ文」『日本語科学』18
予習課題 ling06: 次の1-4の性質を持つ例文をa-dの選択肢から選びなさい。
1. 性質文、帰属、非自立、文脈依存、形容詞・形容動詞
2. 性質文、指定、非自立、文脈独立、名詞
3. 帰属文、自立、名詞
4. 性質文、帰属、自立、文脈独立、名詞

a. 山田氏は社長だ。
b. この作品は微妙だ。
c. 太郎はのんびり屋だ。
d. 太郎の家は神戸だ。
第8回 2011.06.09.
論文 大工原 勇人 (2009) 「副詞「なんか」の意味と韻律」, 『日本語文法』9巻1号(2009年3月), pp.37-53.
予習課題 ling07: エビデンシャルとは何か。例を挙げて説明しなさい。
第9回 2011.06.16.
論文 まとめ
予習課題 ling08: 今回は、文の容認性調査への協力が課題です。(内容については、また授業で説明します。)

 まず、http://www.gges.xyz/epsa/enrollx-j.cgiでメールアドレス等を登録してください。記入後、「confirm」ボタンを押し、さらに、「ログイン」というリンクをクリックして表示されたページのリンクになっている[No. 2]の部分をクリックしてください。次の画面で、いくつかのExperimentへのリンクが出てきます。そこで指定された順番(「まず」→「二番目は」→「三番目は」→ …)で、すべてのExperimentの質問に答えてください。一度にすべて行う必要はありませんが、なるべく、1つのExperimentは中断せずに回答するようにしてください。回答方法に、Yes-or-No (in sets)・Yes-or-No (one each)・Five-ranking (in sets)・Five-ranking (one each)というような選択肢があるExperimentもありますが、その場合は好きな方法を選んでもらって結構です。(同じ Experiment を複数回やってもらっても、もちろんかまいません☆)

Experimentでは、提示される日本語の例文が、指定された意味で(どのくらい)受け入れられるか答えてください。(後半の Experiment では「連動読み」という語が出てきていますが、前半の Experiment で要求されたのと同じような解釈と思ってください。)

何日かに分けて回答する場合は、ここからアクセスできます。

正しい答というものはありませんので、皆さんが持っているネイティブスピーカーの直観を使って、ひとりで回答してください。なお、皆さんの容認可能性判断の結果は、データとして学術研究(論文、発表等)に使用させてもらう場合がありますが、個人が特定されるような形で公表されることは一切ありませんので、安心して回答してください。
第10回 2011.06.23.
論文 野呂 健一 (2008) 「同語反復表現「XというX」について」『日本語文法』8巻2号.
予習課題 ling09: 野呂(2008)において、「XというX」には、a. 「すべてのX」という用法、と b. 「Xこそは」という用法、の2つの用法がある。次の例文における「XというX」の表現は、aとbのいずれに該当するか答えなさい。
 (1)  そこにいた男という男が彼女に目を奪われた。
 (2)  今日という今日は、やるべきことをすべて終わらせようと決めた。
 (3)  あの家電量販店は扱っている商品という商品が安かった。
 (4)  今度という今度は失敗が許されない。
第11回 2011.06.30.
論文 佐野 由紀子 (1998) 「程度副詞と主体変化動詞との共起」『日本語科学』3, pp.7-22.
予習課題 ling10: 次のa-fの三つの副詞を、1.「非常に」類、2.「だいぶ」類、3.「ずっと」類にわけなさい。
 a. はるかに
 b. 少し
 c. とても
 d. なかなか
 e. 一層
 f. ずいぶん
第12回 2011.07.07.
論文 佐野 由紀子 (2004) 「「もっと」の否定的用法について」『日本語科学』15
予習課題 ling11: 以下の例文に出てくる「もっと」を、a「程度用法」、b「否定的用法」に分けよ。
 (1) 私が買ったのは、フェラガモの靴ではなく、もっと安い靴だ。
 (2) 日本も素早い対応を取ったが、米国はもっと早い時期に対応した。
 (3) いつも大きい声で話す母親が、普段よりもっと大きい声で言った。
 (4) 「モデルさんですか?」「もっと地味な仕事ですよ。」
第13回 2011.07.14.
論文 大島 資生 (2008) 「連体修飾節と主節の時間的関係について」, 『日本語文法』8巻1号, pp.101-117.
予習課題 ling12: 以下の例文のうち、大島(2008)で論じられている「繰り返し型」の文を選びなさい。
(a) 娘は母親が次々に選ぶ相手と見合いをした。
(b) 小澤先生は旅先で見つけた昔話を一冊の本にまとめた。
(c) 投手が全力で投げる球を吾郎は一発で場外へ運んだ。
(d) 彼は一所懸命にチラシを配る彼女を手伝った。
(e) 毎朝私は、妻が8時きっかりにいれるコーヒーを飲んだ。
(f) 田中さんは畑で収穫する野菜でこの晩御飯を作った。
(g) 山田シェフが使う包丁を助手が用意します。
第14回 2011.07.21.
論文 幸松 英恵 (2007) 「時間的に逆行している推論に関する一考察」『日本語文法』7巻2号.
予習課題 ling13: 今回の論文で対象としている「時間的に逆行している推論」にあたるものを、以下から全て選んでください。
 a. 嫌いなトマトも残さず食べるほどだから、よほど腹が減っていたらしい。
 b. 雪が降っているから、交通事故が増えるだろう。
 c. やたら上機嫌だから、いいことがあったのかもしれない。
 d. オリンピックに出るほどだから、厳しい練習をしてきたに違いない。
 e. 彼があんなに怖がっているのだから、よほど恐ろしい映画なのだろう。
第15回 2011.07.28.
論文 まとめ
予習課題 ling14 : ling-08で行った調査の続きです。ここにアクセスして、自分が登録したメールアドレスを入力してログインし、表示されているすべての実験に参加してください。前回よりも設問数が多いですが、よろしくお願いします。(やり方については、ling-08 も参照してください。)ling-08に参加していなかった人は、http://www.gges.xyz/epsa/enrollx-j.cgiでメールアドレス等を登録してください。前回入力したメールアドレスがわからなくなった人は、登録をしなおすことは避けてください。上山まで問い合わせてもらえれば登録したメールアドレスをお知らせできます。

授業評価 ... 予習課題のメールとは別便で送ること(件名は「授業評価-fullname」)。いろいろアンケート続きで大変だけれど、よろしくお願いします。

単位の認定と評点について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、各種課題と授業の参加状況に基づいて判定する。目安としては、予習課題をすべてと、グループ発表、そして出席があれば単位はあると思ってよい。出席等が足りない人は、レポート課題を提出してもらう。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

予習課題の設問は、前の週までにこのページにあげておく。予習課題は、短い答えのある具体的な設問で、原則的に、当該の論文を一読すれば答えられる簡単な設問にする予定である。つまり、この予習課題の目的は、授業の前に、少なくとも一度、その週の論文に目を通してもらうことにある。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の週の月曜日 17:00 までに必着とする。
<提出方法>
  • 予習課題の提出は e-mail で。宛て先は、授業中に指示する。
  • メールのSubject(件名):「ling##-姓名」
    たとえば、田中大輝くんが提出する場合の件名は、「ling02-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • 課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。

    発表について

     初回の授業のときに、発表の担当者を決める。希望でグループを組んだ上で、担当したい論文を "早い者勝ち" で登録していく。
    <発表で目指すこと>
  • その論文で、どのような現象が扱われているか、それについて、どのようなことが述べられているかを、なるべくわかりやすくまとめてハンドアウトにする。
  • 例文や結論がまとめられた部分は、原則的に省略せずに引用する。正確に写し、元の論文の何ページの何番の例文かという出典を必ず付けておくようにする。
  • よくわからない部分については、そのまま「疑問点」としてハンドアウトに載せればよい。
  • その論文の主張について自分の意見がある場合には、ハンドアウトに載せてかまわない。自分の意見は、なければなくてもかまわない。
  • <準備の方法>
  • ハンドアウトは、授業の第1〜3回目に説明する方法にしたがって、Word で作成すること。
  • 発表の1週間前までに、ハンドアウトの第1稿が出来上がっていなければ間に合わないと思っておいてほしい。
  • SA の時間などを活用して、積極的に院生と相談してハンドアウトを完成させること。
  • <ハンドアウト最終稿の提出の方法>
  • ハンドアウトの最終稿ができたら、上山および TA の院生に添付ファイルで送ること。印刷をしてもらう必要があるので、いつまでに送ったら間に合うか、事前にちゃんと連絡をとっておくこと。
  • ファイルを添付したメールに、誰がどこを(もしくは、どういう作業を)担当したかを書いておくこと。
  • レポート課題について

    <提出方法>
  • レポート課題の提出は、予習課題とは別の e-mail で(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと)。提出先は予習課題と同じ。
  • メールのSubject(件名):「report-姓名」
    たとえば、田中大輝くんがレポート課題を提出する場合の件名は「report-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • <添付ファイル>
  • レポート課題は、添付ファイルで提出すること。
  • 添付ファイルのファイル名もメールの件名と同様に、「report-姓名」とする。
  • <レポートの修正>
  • レポートの内容をよりよいものにするために、内容の改訂を求めることがある。コメントはメール本文に書く場合もあれば、添付ファイルに書き込む場合もある。上山のコメントの入ったファイルは、オリジナルと区別するために、ファイル名の最後に「-au」と記されている。たとえば、「report-田中大輝」というファイルにコメントが加えられると、「report-田中大輝-au」というファイル名で返送される。なお、1回目の上山からの返事を引用した形のメールにすること。
  • やり直したレポートを提出する場合には、ファイル名に提出回数を含めること。たとえば、初めて提出した場合のファイル名が「report-田中大輝」ならば、2回目に提出する時のファイル名は「report-田中大輝-2」となる。
    <締め切り>
    レポート課題の第1稿の締め切りは7月25日最終版の提出の締め切りは8月31日とする。
    <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。