2010 前期(学部生向け)言語学・応用言語学演習 VII

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

講義題目

 論文の読み方・書き方

授業目的

 この授業では、入門的な講義とは少し違った切り口から、言語学の研究というものを体験してほしいと思っている。卒論などでは、単に、書かれていることを理解するのではなく、自分で考察を進め分析をしていく能力が求められる。ただ、いきなり「自分なりの分析をまとめて主張する」と言われても、どこから手をつけていいか、迷ってしまうに違いない。この授業では、最近の学術雑誌に載った論文をいくつか取り上げ、研究を進めていく基礎体力をつけることを目標としている。

授業の進め方

  • 授業の前に、各自、予習課題に取り組んでもらい、その週の月曜日までにメールで提出してもらう。(詳しいことは、下の説明を参照すること。)
  • 授業の開始時に、主に前回までの授業内容に関する簡単な復習テストを行う。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。
  • 授業は、最初の3回は講義が中心であるが、第6回以降は、学生による発表が中心となる。
  • 授業内容の一覧は、下の表に示している通り。
  • 原則的に全員、グループでの発表に取り組んでもらう。院生さんが準備を手伝ってくれるので、どの時期までにどのように準備を進めるか、院生さんとよく連絡をとって進めること。

教科書について

 最初の3回の授業では、『論文を書くためのWord利用法』(上山あゆみ)くろしお出版 を使います。定価は、税込みで 1680円 ですが、生協にも置いてくれてあるはずです。授業で使うのは、初めの3回だけですが、卒論を書く際にも利用できると思うので、持っていて損はないんじゃないかと思っています。
 第6回以降の授業で使う論文のコピーは、原則的に1週間前に配布します。授業を欠席した人は、次の週の論文のコピーを言語学研究室に取りにくること。

授業内容

(更新日:2010.07.15)
第1回 2010.04.15.
内容 授業の目的と方法の説明
論文
予習課題 なし
第2回 2010.04.22.
内容 (休講)
論文
予習課題
第3回 2010.05.06.
内容 論文を書くための Word 利用法(1〜5章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』
予習課題 ling01 : メールの件名とファイル名を指定された形式にして、Word 文書を添付すること
第4回 2010.05.13.
内容 論文を書くための Word 利用法(5章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』
予習課題 ling02 : 「Usual.dot」をテンプレートとした文書を添付すること(文書の中身は自分の所属と氏名だけでよい)
第5回 2010.05.20.
内容 論文を書くための Word 利用法(5〜8章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』
予習課題 ling03 : (i) 「スタイル」の機能が用いてあり、(ii) 例文の自動連番と例文番号参照を含む文書を作成して添付すること(中身は、無意味なものでもよい)
第6回 2010.05.27.
内容 副詞1
論文 佐野由紀子(1998)「比較に関わる程度副詞について」『国語学』195集, pp.1-14.
予習課題 ling04 : 論文中で取り上げられている3種類の程度副詞のうち、文中に現れる際、(i) 前提を必要とするもの、(ii) 前提を必要としないもの、をそれぞれ答えなさい。
第7回 2010.06.03.
内容 副詞2
論文 北原博雄(1996)「連用用法における個体数量詞と内容数量詞」『国語学』186集, pp.29-42.
予習課題 ling05 : (1) 「水を500ml飲んだ。」この例文中に使われている数量詞は、個体数量詞か内容数量詞か?
(2) 「ペットボトルを3本買った。」この例文中に使われている数量詞は、個体数量詞か内容数量詞か?
(3) 「スカートを2枚洗った。」この例文中に使われている数量詞は、個体数量詞か内容数量詞か?
(4) 「コーラを2本3リットル買った。」この例文中の個体数量詞と内容数量詞を書きぬきなさい。
第8回 2010.06.10.
内容 テ接続1
論文 内丸裕佳子 (2006) 「動詞のテ形を伴う節の統語構造について ――付加構造と等位構造との対立を中心に――」『日本語の研究』第2巻1号, pp.1-15.
予習課題 ling06 : (1) 花子はしゃがんで絵を描いた。
(2) 姉は気持ち悪がって、その置物をどこかへしまった。
上の(1),(2)それぞれの文を、次の(a),(b),(c)の指定にしたがって書き換え、その上で、書き換えた文が容認できるかどうか、自分の感覚にしたがって答えてください。
(a) 下線のテ形部分に「しか」を後接させて「しか-ない」文に変える。
(b) 下線のテ形部分を「さえ」で取り立てる文に変える。
(c) 下線のテ形部分を擬似分裂化した文に変える。
第9回 2010.06.17.
内容 テ接続2
論文 有田節子(1999)「テハ構文の2つの解釈について」『国語学』199集, pp.41-56.
予習課題 ling07 : 論文中では、(A) 否定的含意を持つ条件的テハ, (B) 否定的含意を持たない条件的テハ, (C) 反復性を持つ非条件的テハ, (D) 反復性を持たない非条件的テハ, という4つのテハ構文が区別されている。次の例文は、それぞれ (A)〜(D)のどれにあたるか答えてください。
(1) ジュースの空き缶をポイ捨てしては、近所の人に怒られていた。
(2) 友達を裏切っては、世間が許さない。
(3) あなたのような美しい方に頼まれては、悪い気はしない。
(4) お使いを引き受けてはお釣りを忘れ、留守番を任されてはすぐに外出し、こいつに物を頼んでも、ろくなことがない。
第10回 2010.06.24.
内容 モダリティ1
論文 三宅知宏(1995)「「推量」について」『国語学』183集, pp.1-11
予習課題 ling08 : 次のそれぞれの例文に使われている認識的モダリティの下位類型を、{A.推量 B.実証的判断 C.可能性判断 D.確信的判断}から選んで答えてください。
(1) 彼はまだ勉強しているらしい。
(2) 禁酒法時代の密造ウイスキーは、今のどんな高級ウイスキーよりもいい味がしたに違いない。
(3) 5時半は過ぎるだろうな。
(4) 泊るかもしれないし、泊らないかもしれない。
第11回 2010.07.01.
内容 モダリティ2
論文 森山卓郎(1997)「日本語における事態選択形式」『国語学』188集, pp.110-123
予習課題 ling09 : 論文を参考にして、次の(1), (2), (3) それぞれの文を、矛盾選択テストを行う形に変えなさい。また、その文を容認することが出来るかどうかを答えなさい。
(1) 友達を見捨てるしかなかった。
(2) 友達を見捨ててはならなかった。
(3) 友達を見捨ててもよかった。
第12回 2010.07.15.
内容 とりたて詞1
論文 澤田美恵子 (2004) "いわゆる詠嘆の「も」について―対象の再認識という心的処理―", 『日本語文法』4巻2号, pp.153-168.
予習課題 ling10 : 今回の論文の主張に従うと、次の例文は、「詠嘆の解釈を持つための2つの条件」を満たしていることになる。その2つの条件がどのように満たされているか、説明してください。
 王もついに756本うったね。
第13回 2010.07.22.
内容 とりたて詞2
論文 中尾有岐 (2008) 「並列事態が想定しにくいモについて」, 『日本語文法』8巻1号, pp.36-52.
予習課題 ling11 : 今回の論文の主張に従って、次の例文のモを、(ア)典型例表示のモ、(イ)潜在的意識活性化のモ、(ウ)解釈のモに分類しなさい。
(1) 君もしつこいなぁ。
(2) イチローもエラーをすることがあるんだなぁ。
(3) 馬鹿も馬鹿、底抜けの大馬鹿野郎だ。
(4) こんな結末にするなんて、この作者も意地が悪いなぁ。
(5) いつもあんなに乱暴なのに、自分で弁当を作っているなんて、花子も女の子だなぁ。
(6) 彼が一世一代と出かけていったのは、アメリカもラスベガスだ。

授業評価 ... 予習課題のメールとは別便で送ること(件名は「授業評価-fullname」)。いろいろアンケート続きで大変だけれど、よろしくお願いします。

単位の認定と評点について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、各種課題と授業の参加状況に基づいて判定する。目安としては、予習課題をすべてと、グループ発表、そして出席があれば単位はあると思ってよい。出席等が足りない人は、レポート課題を提出してもらう。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

予習課題の設問は、前の週までにこのページにあげておく。予習課題は、短い答えのある具体的な設問で、原則的に、当該の論文を一読すれば答えられる簡単な設問にする予定である。つまり、この予習課題の目的は、授業の前に、少なくとも一度、その週の論文に目を通してもらうことにある。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の週の月曜日 17:00 までに必着とする。
<提出方法>
  • 予習課題の提出は e-mail で。宛て先は、授業中に指示する。
  • メールのSubject(件名):「ling##-姓名」
    たとえば、田中大輝くんが提出する場合の件名は、「ling02-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • 課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。

    発表について

     初回の授業のときに、発表の担当者を決める。希望でグループを組んだ上で、担当したい論文を "早い者勝ち" で登録していく。
    <発表で目指すこと>
  • その論文で、どのような現象が扱われているか、それについて、どのようなことが述べられているかを、なるべくわかりやすくまとめてハンドアウトにする。
  • 例文や結論がまとめられた部分は、原則的に省略せずに引用する。正確に写し、元の論文の何ページの何番の例文かという出典を必ず付けておくようにする。
  • よくわからない部分については、そのまま「疑問点」としてハンドアウトに載せればよい。
  • その論文の主張について自分の意見がある場合には、ハンドアウトに載せてかまわない。自分の意見は、なければなくてもかまわない。
  • <準備の方法>
  • ハンドアウトは、授業の第1〜3回目に説明する方法にしたがって、Word で作成すること。
  • 発表の1週間前までに、ハンドアウトの第1稿が出来上がっていなければ間に合わないと思っておいてほしい。
  • SA の時間などを活用して、積極的に院生と相談してハンドアウトを完成させること。
  • <ハンドアウト最終稿の提出の方法>
  • ハンドアウトの最終稿ができたら、上山および TA の院生に添付ファイルで送ること。印刷をしてもらう必要があるので、いつまでに送ったら間に合うか、事前にちゃんと連絡をとっておくこと。
  • ファイルを添付したメールに、誰がどこを(もしくは、どういう作業を)担当したかを書いておくこと。
  • レポート課題について

    <提出方法>
  • レポート課題の提出は、予習課題とは別の e-mail で(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと)。提出先は予習課題と同じ。
  • メールのSubject(件名):「report-姓名」
    たとえば、田中大輝くんがレポート課題を提出する場合の件名は「report-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • <添付ファイル>
  • レポート課題は、添付ファイルで提出すること。
  • 添付ファイルのファイル名もメールの件名と同様に、「report-姓名」とする。
  • <レポートの修正>
  • レポートの内容をよりよいものにするために、内容の改訂を求めることがある。コメントはメール本文に書く場合もあれば、添付ファイルに書き込む場合もある。上山のコメントの入ったファイルは、オリジナルと区別するために、ファイル名の最後に「-au」と記されている。たとえば、「report-田中大輝」というファイルにコメントが加えられると、「report-田中大輝-au」というファイル名で返送される。
  • やり直したレポートを提出する場合には、ファイル名に提出回数を含めること。たとえば、初めて提出した場合のファイル名が「report-田中大輝」ならば、2回目に提出する時のファイル名は「report-田中大輝-2」となる。
    <締め切り>
    レポート課題の第1稿の締め切りは7月22日最終版の提出の締め切りは8月31日とする。
    <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。