2008 前期(学部生向け)言語学・応用言語学演習 VII

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

講義題目

 日本語の形態論・統語論・意味論

授業目的

 この授業では、入門的な講義とは少し違った切り口から、言語学の研究というものを体験してほしいと思っている。卒論などでは、単に、書かれていることを理解するのではなく、自分で考察を進め分析をしていく能力が求められる。ただ、いきなり「自分なりの分析をまとめて主張する」と言われても、どこから手をつけていいか、迷ってしまうに違いない。この授業では、最近の学術雑誌に載った論文をいくつか取り上げ、研究を進めていく基礎体力をつけることを目標としている。

授業の進め方

  • 授業の前に、各自、予習課題に取り組んでもらい、前日までにメールで提出してもらう。(詳しいことは、下の説明を参照すること。)
  • 授業の開始時に、主に前回までの授業内容に関する簡単な復習テストを行う。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。
  • 授業は、第3回までは基本的に講義が中心であるが、第4回以降は、学生による発表が中心となる。
  • 授業内容の一覧は、下の表に示している通り。
  • 原則的に全員、発表かレポート課題のどちらかに取り組んでもらう(つまり、発表を担当した人は、ハンドアウトの提出をもってレポート課題を提出したとみなす)。レポート課題は、この授業で扱った論文の中から1つ選んで、その内容をわかりやすくまとめて、Word文書で提出するというものである。

授業内容

(更新日:2009.06.26)
第1回 2008.04.15.
内容 授業の目的と方法の説明
論文を書くための Word 利用法(1〜5章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』原稿
予習課題 なし
第2回 2008.04.22.
内容 論文を書くための Word 利用法(5章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』原稿
予習課題 「Usual.dot」をテンプレートとした文書を添付すること(文書の中身は自分の所属と氏名だけでよい)
第3回 2008.05.13.
内容 論文を書くための Word 利用法(5〜7章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』原稿
予習課題 (i) 「スタイル」の機能が用いてあり、(ii) 例文の自動連番と例文番号参照を含む文書を作成して添付すること(中身は、無意味なものでもよい)
第4回 2008.05.20.
内容 構文研究1
論文 笹井 香 (2006) 「現代語の感動文の構造 ――「なんと」型感動文の構造をめぐって――」、『日本語の研究』第2巻1号
予習課題 次の3つの文は、それぞれA型感動文とB型感動文どちらに分類されるか答えなさい。
(1) まあ、めずらしい犬!
(2) ああ、なんという美しさ!
(3) 彼女のあの図々しさ!
第5回 2008.05.27.
内容 構文研究2
論文 冨樫 純一 (2002) 「談話標識「ふーん」の機能」、『日本語文法』2巻2号
予習課題 著者は、「ふーん」はどういうことを示す標示だと言っているか書きなさい。
第6回 2008.06.03.
内容 統語研究1
論文 赤楚 治之 (2005) 「日本語における概数数量詞のQ-floatについて」、『日本語文法』5巻2号
予習課題 概数数量詞と基数数量詞の例を1つずつあげなさい
第7回 2008.06.10.
内容 統語研究2
論文 佐藤 香織 (2002) 「イベント名詞句補部からの数量詞遊離現象」、『日本語文法』2巻2号
予習課題 次のそれぞれの名詞句がイベント名詞かどうかを答えなさい
(1) つま先, (2) 出荷, (3) 題名, (4) 眼, (5) 執筆
第8回 2008.06.17.
内容 形態論・語彙意味論1
論文 新屋 映子 (2006) 「形容詞派生の名詞「〜さ」を述語とする文の性質」、『日本語の研究』第2巻4号
予習課題 次のそれぞれの文の「〜さ述部」が中立的用法か評価的用法のどちらであるか答えなさい
(1) 座敷は8畳ぐらいの広さだった。
(2) 部屋の中は熱帯のような暑さだった。
(3) 80歳とは思えない若々しさだ。
(4) 彼の頭蓋骨は人並みの大きさだった。
第9回 2008.06.24.
内容 形態論・語彙意味論2
論文 金 英淑 (2004) 「「VNする」の自他交替と再帰性」、『日本語文法』4巻2号
予習課題 「VNする」形式の動詞の例3つと和語動詞の例3つをあげなさい。
第10回 2008.07.01.
内容 意味論1
論文 岡野 ひさの (2007) 「いわゆる逆接のノニは何を表すか」、『日本語文法』7巻1号
予習課題 次の文について著者が ok としているか * としているか答えなさい。
(1)北海道は、冬は寒いノニ、梅雨はない。
(2)北海道は、冬は寒いケレド、梅雨はない。
(3)道に迷ったノニ、暗くなってきた。
(4)道に迷ったから、暗くならないで欲しいと思った。
(5)道に迷えば、暗くならない。
第11回 2008.07.08.
内容 (集中講義のため、休講)
論文 ---
予習課題 なし
第12回 2008.07.15.
内容 意味論2
論文 衣畑 智秀 (2003) 「ノニ,クセニ,ニモカカワラズ」、『日本語文法』3巻1号
予習課題 次のそれぞれの文に、筆者がどのような容認度の印をつけているか答えなさい。(無印の場合には、「ok」と答えてください。)
(1) 小学生になったのに、だらしない。
(2) 小学生になったくせに、だらしない。
(3) 小学生になったにもかかわらず、だらしない。
(4) 雪が降っているのに、父は出かけた。
(5) 雪が降っているくせに、父は出かけた。
(6) 雪が降っているにもかかわらず、父は出かけた。
授業評価
第13回 2008.07.22.
内容 (集中講義のため、休講)
論文 ---
予習課題 なし

単位の認定と評点について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、各種課題と授業の参加状況に基づいて判定する。目安としては、予習課題をすべてとレポート課題/発表1つ、そして出席があれば単位はあると思ってよい。出席等が足りない人は、レポート課題を追加すること。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

予習課題の設問は、前の週までにこのページにあげておく。予習課題は、短い答えのある具体的な設問で、原則的に、当該の論文を一読すれば答えられる簡単な設問にする予定である。つまり、この予習課題の目的は、授業の前に、少なくとも一度、その週の論文に目を通してもらうことにある。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の前日(月曜日)の17:00までに必着とする。
<提出方法>
  • 予習課題の提出は e-mail で。宛て先は、授業中に指示する。
  • メールのSubject(件名):「予習##-姓名」
    たとえば、第2回の授業のための予習課題を田中大輝くんが提出する場合の件名は、「予習02-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • 課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。

    発表について

    初回の授業のときに、発表の担当者を決める。1つの論文を1人で担当しても、グループで担当してもかまわない。発表を希望する人は、それぞれ自分が担当したい論文を選び、"早い者勝ち" で登録していく。発表が当たらなかった人は、レポート課題を出してもらうことになる。
    <発表で目指すこと>
  • その論文で、どのような現象が扱われているか、それについて、どのようなことが述べられているかを、なるべくわかりやすくまとめてハンドアウトにする。
  • 例文や結論がまとめられた部分は、原則的に省略せずに引用する。正確に写し、元の論文の何ページの何番の例文かという出典を必ず付けておくようにする。
  • よくわからない部分については、そのまま「疑問点」としてハンドアウトに載せればよい。
  • その論文の主張について自分の意見がある場合には、ハンドアウトに載せてかまわない。自分の意見は、なければなくてもかまわない。
  • <準備の方法>
  • ハンドアウトは、授業の第1〜3回目に説明する方法にしたがって、Word で作成すること(こちらはまだ Word 2007 に対応していないので、古いバージョンで読める形で保存してください。)
  • 発表の1週間前までに、ハンドアウトの第1稿が出来上がっていなければ間に合わないと思っておいてほしい。
  • SA の時間などを活用して、積極的に院生と相談してハンドアウトを完成させること。
  • <ハンドアウト最終稿の提出の方法>
  • ハンドアウトの最終稿ができたら、上山および TA の院生に添付ファイルで送ること。印刷をしてもらう必要があるので、いつまでに送ったら間に合うか、事前にちゃんと連絡をとっておくこと。
  • 特にグループで担当した場合には、ファイルを添付したメールに、誰がどこを(もしくは、どういう作業を)担当したかを書いておくこと。
  • レポート課題について

    <提出方法>
  • レポート課題の提出は、予習課題とは別の e-mail で(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと)。提出先は予習課題と同じ。
  • メールのSubject(件名):「report-姓名」
    たとえば、田中大輝くんがレポート課題を提出する場合の件名は「report-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • <添付ファイル>
  • レポート課題は、添付ファイルで提出すること。
  • 添付ファイルのファイル名もメールの件名と同様に、「report-姓名」とする。
  • <レポートの修正>
  • レポートの内容をよりよいものにするために、内容の改訂を求めることがある。コメントはメール本文に書く場合もあれば、添付ファイルに書き込む場合もある。上山のコメントの入ったファイルは、オリジナルと区別するために、ファイル名の最後に「-au」と記されている。たとえば、「report-田中大輝」というファイルにコメントが加えられると、「report-田中大輝-au」というファイル名で返送される。
  • やり直したレポートを提出する場合には、ファイル名に提出回数を含めること。たとえば、初めて提出した場合のファイル名が「report-田中大輝」ならば、2回目に提出する時のファイル名は「report-田中大輝-2」となる。
    <締め切り>
    レポート課題の第1稿の締め切りは7月22日最終版の提出の締め切りは8月31日とする。
    <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。