2017 前期(院生向け)理論言語学特論 I

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

講義題目

 日本語統語論:構造構築と意味

授業概要

 この授業では、基本的に生成文法の立場にたちつつ、より具体的に日本語の構文と解釈の関係を考察し、その規則性をどのように理論的にとらえることができるかを議論していく。講義のなかで、私の考えている案を紹介しはするが、それを覚えてもらうことが目標ではない。他の解決方法がないかどうか、他の方法をとった場合、どのように予測が異なるのか、各自に考えてもらいたいと思っている。
 統語意味論には、その仮説を様々な方法でシミュレートすることができる統語意味論デモプログラムのページがあるので、そのプログラムを活用して、具体的に各自が自分で考えてみる機会を作っていきたい。また、この授業では Moodle を使用する予定なので、出席者はなるべくパソコンを持参してほしい。

参考書

 以下にあげる『統語意味論』の内容に基づいて授業を進めていくが、少し高価な本であるため、授業では購入を必須とはせず、授業で配布するプリント等で内容を追いかけることが可能なように工夫したい。『統語意味論』は言語学研究室で閲覧することができるので、適宜、活用してほしい。
  • 上山あゆみ (2015) 『統語意味論』 名古屋大学出版会。 \5400。

単位の認定と提出物について

 この授業の評価は、
  • 復習テスト
  • 実践課題
  • 感想課題
  • 出席
を合計して算出する。復習テストと実践課題の満点は、その都度、異なる。「感想課題」は、基本的に5点とし、具体的な改善点等が示唆されている場合に限り、少し上乗せがある。これらについては、締切までに提出がなかった場合には、0点となり、総合点から減点されることになる。「出席」は、原則的に1回 2点。

これとは別に「自由参加課題」が置かれる場合がある。これは、(名前の通り)必ずしも参加しなくてもかまわない課題なので、提出がなくても減点はない。自由参加課題の場合には、減点法ではなく加点法で付ける。あまり点数がインフレしすぎないように控えめにつける場合もあるので、低く評価されたと勘違いしないでほしい。

授業内容

(更新日:2017.04.09)
第1回 2017.04.13.
説明する内容 統語論とは?
授業の進め方についての説明
本の関連するページ 序章
次回までの宿題 <実践課題1> http://www.gges.xyz/ueyama/TreeDrawer.shtml から各自のパソコンに TreeDrawer をインストールしてください。Windows版と Mac版があります。この課題の「提出」として、「Windows版をインストールしました」「Mac版をインストールしました」その他、何かインストールに問題があれば、どうトラブルがあったかを報告してください。この TreeDrawer の使い方については、次回の授業で説明します。
<感想課題1> 第1回の授業で用いたスライドのファイルを授業のサイトに付けておきます。授業の中での疑問/感想等をひとこと送ってもらえますか。次回からの参考にします。
第2回 2017.04.20.
説明する内容 構造と意味解釈
TreeDrawer の説明
本の関連するページ 第1章 1.1, 1.2.1, 1.3.(ただし、説明の仕方は少し異なる)
次回までの宿題 <実践課題2> スライド p.5 にある、「白いギターの箱」の2つの樹形図を自分で作成し、Word 文書に貼り付けて提出してください。何かコメント/質問がある場合には、Word 文書の中ではなく、オンラインテキストのほうに書いてください。
<自由参加課題1> 第2回の授業で用いたスライドのファイルを授業のサイトに付けておきます。この pp.4-12 の部分の内容について、何か「反論」をしてください。「いちゃもん」でもかまいません。(pp.4-12 全体に渡ることでなくても、どこかワンポイントでもかまいません。)
<自由参加課題2> Windows版の TreeDrawer のマニュアルの Word ファイルを授業のサイトに付けておきます。(Mac版のマニュアルとして、言語学4年の加藤くんが作成してくれたものも添付しました。) このマニュアルで、直したほうがいい点や追加したほうがいい点を具体的に指摘してください。提出受付は、4月いっぱい。提出するときには、忘れずに「提出ボタン」をクリックしてください。
第3回 2017.05.01.
説明する内容 [文法片1] 項と格助詞
本の関連するページ 第2章 2.1.〜2.3.
次回までの宿題 <実践課題3> 文法片1で、上から2つめの 「ジョンがメアリを追いかけた」を選び表示された Numeration から始めて、適格な derivation(=赤字で書かれた解釈不可能素性が残らず、要素が1つに組み合わされた状態に至る組み合わせ方)を1つ作り、最後の画面のピンクの BOX内(スライドp.27 参照)をコピーしたものをオンラインテキストに貼り付けてください。必ずしも、できあがった文の語順が「ジョンがメアリを追いかけた」になる必要はありません。
<実践課題4> 文法片1で、上から2つめの 「ジョンがメアリを追いかけた」を選び表示された Numeration から始めて、不適格な derivation(=要素が1つになっているが、赤字で書かれた解釈不可能素性が残ってしまっている組み合わせ方)を1つ作り、最後の画面のピンクの BOX内(スライドp.27 参照)をコピーしたものをオンラインテキストに貼り付けてください。
<感想課題2> 授業のサイトに授業で用いたスライドが置いてありますので、質問/感想/コメントを書いてください。この課題については、必ず「提出ボタン」をクリックしてください。提出ボタンが押されていないと評定されません。
第4回 2017.05.11.
説明する内容 [文法片2] 付加詞/zero-Merge
本の関連するページ 第2章 2.4, 2.6, 1.4.6.
次回までの宿題 <実践課題5> 文法片1で、上から3つめの 「男の子が女の子をスケートボードで追いかけた」を選び、表示された Numeration から始めて、適格な derivationを1つ作り、最後の画面のピンクの BOX内をコピーしたものと、そのときの意味表示をオンラインテキストに貼り付けてください。
<実践課題6> 文法片2で、上から5つめの 「メアリを追いかけた」を選び、表示された Numeration から始めて、適格な derivationを1つ作り、最後の画面のピンクの BOX内をコピーしたものと、そのときの意味表示をオンラインテキストに貼り付けてください。
<自由参加課題3> 授業のサイトに授業で用いたスライドが置いてありますので、授業内容についての質問があれば、書いてください。「提出ボタン」を押してもらわないと、評定できませんので、注意!
<自由参加課題4> 文法片3については、まだ何も説明していませんが、上から5つめの 「ビルがジョンにメアリを追いかけさせた」を選び、表示された Numeration から適格な derivationを1つ作り、最後の画面のピンクの BOX内をコピーしたものと、そのときの意味表示をオンラインテキストに貼り付けてください。
第5回 2017.05.18.
説明する内容 [文法片3] 使役構文
本の関連するページ 第3章 3.1.〜3.2.
次回までの宿題 <実践課題 7> 文法片3を使って 「ビルがジョンに誘わせた」 を分析しなさい。
(「分析する」には、「ビルがジョンに誘わせた」が出力されるような Numeration を自分で作って、その Numeration から適格な derivation をして、語順と意味が適切になっているかどうかを確認します。うまくいったときの構造が、この文に対する分析ということになります。Numeration を自分で作るときの方法は、第3回目の授業のときのスライドを見てください。)
最終的にうまくいったときの、ピンクのBOX内を、いつものようにオンラインテキストに貼り付けてください。
<自由参加課題5> 授業のサイトに授業で用いたスライドが置いてありますので、授業内容についての質問があれば、書いてください。「提出ボタン」を押してもらわないと、評定できませんので、注意!
第6回 2017.05.25.
説明する内容 [文法片3] 受動構文
本の関連するページ 第3章 3.3.〜3.4.
次回までの宿題 <実践課題8> 文法片3の rare1 を使って 「メアリがジョンに誘われた」 を分析し、最終的にうまくいったときのピンクのBOX内と意味表示とを、オンラインテキストに貼り付けてください。
<実践課題9> 文法片3の rare2 を使って 「メアリがジョンに誘われた」 を分析し、最終的にうまくいったときのピンクのBOX内と意味表示とを、オンラインテキストに貼り付けてください。
<自由参加課題6> 授業のサイトに授業で用いたスライドが置いてありますので、授業内容についての質問があれば、書いてください。「提出ボタン」を押してもらわないと、評定できませんので、注意!
<自由参加課題7> 次のように-sase-と-rare-は共起しうる.(2)のほうは,容認性が低い文であると感じられる場合が多いだろうが,たとえば,ジョンが非常にメアリをほめたがる人だとして,普段は,メアリがすぐにそれをさえぎってしまうのだが,今回は,ビルがメアリに命じて,ジョンに最後まで言わせるように,いいふくめてある,という状況を想定すれば,容認できるようになるだろう.
(1)  ビルがジョンにメアリをほめさせられた.
(2)  ビルがメアリをジョンにほめられさせた.
文法片3では、-sase- が Merge する規則2種類と、2種類の -rare- が仮定されている。(1)や(2)のような文は、文法片3ではどのように分析されるか、考察してファイルで提出しなさい。(「提出」ボタンをクリックしないと、評定されないので注意すること。)
<自由参加課題8> [応用問題] 高井 (2009b)では,動詞の項構造にAgentが含まれるか含まれないかによって(1)と(2)の対立が見られることを指摘している.(1)と(2)は,Causerとなる参与者だけでなく,そのCauserにさらなる命令権を持つSuper-Causerとでも呼ぶべき参与者があらわれた文である.
(1) 動詞の項構造にAgentが含まれている場合:
  a. [監督が] [コーチに] [選手を] 1時間走らせた.
  b. [オーナーが] [監督に] [田中を] 試合に 復帰させた.
  c. [校長先生が] [担任の先生に] [生徒を] 帰らせた.
  d. [作戦本部が] [司令官に] [陸戦部隊を] 敵の基地に 突入させた.
  e. [管制塔は] [機長に] [209便を] 強行着陸させた.
  f. [監督は] [コーチに] [選手達を] まだ泳がせている.
(2) 動詞の項構造にAgentが含まれていない場合:
  a. ?*[隣国の諜報機関が] [工作員に] [我が国の金融システムを] 崩壊させた.
  b. ?*[ジョンが] [ビルに] [冷蔵庫の野菜を] 腐らせた.
  c. ?*[敵対する組が] [ビルに] 毒薬の投与によって [ジョンの体力を] 弱らせた.
  d. ?*[交通局が] [運転手に] [電車の到着を] 遅れさせた.
  e. ?*[市長が] [署長に] [若年層の犯罪数を] 激減させた.
  f. ??[ジョンが] [新人議員に] [議会を] 混乱させた.
文法片3の考え方を応用して、この現象に説明を与えるとしたら、どのようになるか、ファイルに書いて提出しなさい。ただし、これは、文法片3では説明しきれない観察であり、正解が用意されている課題ではない。(「提出」ボタンをクリックしないと、評定されないので注意すること。)
第7回 2017.06.01.
説明する内容 [文法片3] 「A(の)B」構文 「Aは/がB(だ)」構文
本の関連するページ 第4章 の主要部分
次回までの宿題
第8回 2017.06.08.
説明する内容 [文法片3] 連体修飾
本の関連するページ 第5章 の主要部分
次回までの宿題
第9回 2017.06.15.
説明する内容 [文法片4] 長距離関係1:格助詞ガと移動
本の関連するページ 第7章
次回までの宿題
第10回 2017.06.22.
説明する内容 [文法片4] 長距離関係2:疑問文
本の関連するページ 第2章 2.6.
次回までの宿題
第11回 2017.06.29.
説明する内容 [文法片5] Predication と Partitioning
本の関連するページ 第8章 8.1.〜8.4.
次回までの宿題
第12回 2017.07.06.
説明する内容 [文法片5] 不定語+モ
本の関連するページ 第6章
次回までの宿題
第13回 2017.07.20.
説明する内容 [文法片5] 連動読み
本の関連するページ 第8章 8.5.〜8.6.
次回までの宿題
第14回 2017.07.27.
説明する内容
本の関連するページ 第9章 の一部
次回までの宿題