この授業では、生成文法において、日本語のいわゆる scrambling 構文(「〜ヲ(ニ)〜ガ…」の語順の文)がどのように分析されてきたかを見て、それを通して、生成文法における分析の進め方について、論じていきたいと思っています。原則的に、理論の枠組みそのものの概説は行わない予定です。理論の概論を学ぶかわりに、実際の分析の現場を擬似体験することによって、理論への理解を深めるというのが目標です。
はじめに、この構文に関して提案されてきた分析をいくつか紹介していきます。特に、次の4つの論文を取り上げる予定です。
- Saito, Mamoru (1985) Some Asymmetries in Japanese and Their Theoretical Implications, Doctoral dissertation, MIT, Cambridge. より 第2章
- Saito, Mamoru (1992) "Long Distance Scrambling in Japanese," Journal of East Asian Linguistics, 1-1, pp.69-118.
- Boskovic, Zeljko, and Daiko Takahashi (1998) "Scrambling and Last Resort," Linguistic Inquiry 29-3, pp.347-366.
- Fukui, Naoki, and Mamoru Saito (1996) "Order in Phrase Structure and Movement," Linguistic Inquiry 29-3, pp.439-474.
これらを比較検討した上で、私の考えている分析を紹介したいと思っています。その内容は、次の2章(と3章)が中心となっています。
- Ueyama, Ayumi (1998) Two Types of Dependency, Doctoral dissertation, University of Southern California, distributed by GSIL publications, USC, Los Angeles.
それぞれの論文で用いられている専門用語などは、一応、授業の中で定義を説明して導入するつもりですが、一週間しかない集中講義なので、かなり盛りだくさんの内容になるかもしれません。前もって、1.から4.の論文に目を通しておくことができれば、余裕をもって授業に参加することができると思います。全部読むのが無理な場合は、1. を優先して読み、それから 2. に取り組むのがいいでしょう。3. と 4. に関しては、参考程度に目を通しておいてもらうだけで十分かもしれません。
学部生の評価は、次のような提出物にもとづいて行う予定です。
- 授業の終わりに書いてもらう感想と質問
- 授業のはじめに行う、前日の内容に関するちょっとした小テスト
- (ちょっとした宿題を出す可能性もありますが、詳細は未定)
院生の場合、上のものに加えて、授業でとりあげた論文のいずれかの内容をまとめたレポートを提出してもらおうと思っています。提出期限は大学の規定にしたがうことになるので、場合によっては、講義終了後あまり時間がないこともありえます。前もって準備を進めておいた方がいいでしょう。何か質問などあれば、いつでも上山まで e-mail してください。
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