「この本を読んでくださるみなさんへ」
 私たちが毎日使っている「ことば」とは一体どんなものなのでしょうか。この本は「ことば」というものをあらためて見つめるきっかけになることを目指したものです。

 私たちは、友だちとしゃべるときはもちろん、考えごとをするときにも、ことばを使っています。他人の考えていることを理解したり新しい知識を得ようとするときにも、ことばはかかせません。誰でもことばを使っているのに、わざわざ「ことば」そのものについて考えたことはないのではないでしょうか。

 「ことばなんて、雰囲気で使ってるだけ。」と思っている人も多いかもしれません。確かに、私たちが実際に話していることばは、国語の教科書に書いてあるような文でもNHKのアナウンサーがしゃべるような文でもありません。では、ふだん私たちはメチャクチャな文をしゃべっているのでしょうか。あらためて調べてみると、いくらメチャクチャに見えても案外「きまり」にしたがっているものです。この本ではことばのほんの一面しか扱えませんが、私たちが無意識のうちに「きまり」にしたがってことばを使っていることに気づいてほしいと思っています。

 ことばに何らかの「きまり」があることに注目してそれを整理しようとするのが言語学の仕事です。うまく整理をするためには、データを公平に集めてよく観察することが必要になります。そういう練習をするために練習問題をつけました。

 私たちが普段使っている日本語を観察するのも大事ですが、外へ目を向けてみるのも楽しいものです。世界中には何千ということばがあり、それぞれ「きまり」をもっています。その中には、日本語と共通しているきまりもあるでしょうし、まったく目新しいきまりもあるかもしれません。ある程度日本語を観察した上で外国語も少しのぞいてみましょう。日本語のどういう部分が変わっていてどういう部分が普通なのかという目で外国語を見てみると、中学のときに英語を習ったのとはまた違う印象がうまれるかもしれません。