上昇調のイントネーションで発話される否定疑問文の意味機能

言語学・応用言語学専攻 高橋百華

1.目的と提案

(1)  上昇調(平板型)のイントネーションの否定疑問文

   a. 「アルマゲドン」面白くない?
   b. 「アルマゲドン」面白いんじゃない?

   cf. 「アルマゲドン」面白いね/よね/でしょう?


(2)  本論文の目的 :
     「〜ない?」「〜んじゃない?」という上昇調(平板型)のイントネーションの代表的な否定疑問文
     を比べ、それぞれの意味・用法を詳しく考察する。


(3)  提案 :
     「〜ない?」は話し手自身の意見を述べている。

(4)  a. 寒くない?
   b. 寒いんじゃない?

(5)  a. ジロウかっこよくない?
   b. ジロウかっこいいんじゃない?



2.確信度

(6)  (3) ゆえに 「〜ない?」は、確信度が高い。

(7)  a. *(予告編を見ながら)アルマゲドン面白くない?
   b.  (予告編を見ながら)アルマゲドン面白いんじゃない?

(8)  a.  (映画の途中で)アルマゲドン面白くない?
   b.  (映画の途中で)アルマゲドン面白いんじゃない?


2.1.副詞との共起

「〜ない?」と「〜んじゃない?」とでは確信度が異なるので、共起できる副詞が異なる。

(9)  a.  その料理、多分美味しいんじゃない?
   b. *その料理、多分美味しくない?

(10) a.  その料理、もしかしたら美味しいんじゃない?
   b. *その料理、もしかしたら美味しくない?


2.2.強要する力

(11) (3) ゆえに「〜ない?」は相手に強要し働きかける力が強い。

(12) a. 木村拓哉かっこよくない?
    b. 木村拓哉かっこいいんじゃない?



3.直接体験

(13) (3) ゆえに 「〜ない?」は、通常、話し手が経験したことがあることについて使われる。

(14) a. あのお店安くない?
    b. *あのお店行ったことないけど安くない?

    cf. あのお店行ったことないけど安いんじゃない?


(15)  直接体験なのに、あえて「〜んじゃない?」を使うと、投げやりで皮肉な意味になる。

(16) a. あなたが作ったにしては美味しくない?
    b. あなたが作ったにしては美味しいんじゃない?

(17) a. 君、かわいくない?
    b. 君、かわいいんじゃない?



参考文献

神尾昭雄(1990)『情報のなわ張り理論―言語の機能的分析―』 東京:大修館書店.

三宅知弘(1994)「否定疑問文による確認要求的表現について」 『現代日本語研究』1:15-26. 大阪大学文学部日本学科現代日本学講座.

三宅知弘(1996)「日本語の確認要求的表現の諸相」 『日本語教育』89:111-122.

森山卓郎(1992)「日本語における「推量」をめぐって」 『言語研究』101:64-8.

仁田義雄(1991)『日本語のモダリティと人称』 東京:ひつじ書房.