(1) ダケとバカリで違いがなさそうな例:
a. 私{だけ/ばかり}が損をしている気がします。
b. 今度{だけ/ばかり}は私も許せない!
(2) ダケとバカリで違いがある例:
a. あなたが好きなものを二つ{だけ/ばかり}持ってきて下さい。
b. 彼女は顔を整形しているからきれいな{だけ/*ばかり}だ。
c. 休みの日はゴロゴロして{*だけ/ばかり}いる。
(3) ダケ
a. 限度を表す(「丈」から由来)[森田(1989: p.] e.g.あなたが好きなものを二つだけ持ってきて下さい。
b. 動詞‐テ形には後続できない。(「*花子はいつも泣いてだけいる」)
(4) バカリ
a. ある領域を「どんな様子だろうか?」探索すると、その行為/対象が繰り返して見つかる、ということを表す。[定延(2001)]
b. 派生した様々な意味:
(i) 要素の多さ、割合・頻度の高さといった量的解釈を伴う、
(ii) 数量詞に後続する文では、おおよその程度を表す(「計る/測る/量る」から由来)[森田(1989: p.]
e.g.あなたが好きなものを二つばかり持ってきて下さい。
(iii) 限定、比喩、例示、強調 等
バカリは、依頼文において使うと不自然になる。これは、(4a)探索できるというバカリの特徴が当てはまらないからである。
(5) 赤いリボン{だけ/??ばかり}切ってください。
バカリ文では、「探索」の結果、複数回見つかるものでなければならない。茂木(2002)はこの特徴を「複数性の制限」と規定している。そのため、(6b)の「私」のように複数見つかるとは解釈できないものでは、バカリが使えない。
(6) a. 今年の新入部員は女子{だけ/ばかり}だ。
b. 今年の新入部員は私{だけ/*ばかり}だ。
バカリ文は「複数の存在」解釈の他に「行為の繰り返し」解釈があるが、(7)のような形容動詞述語の文では、行為を繰り返すという解釈ができないのでバカリ文が不適切となる。[茂木(2002)]
(7) 彼女は顔を整形しているからきれいな{だけ/*ばかり}だ。
従来の研究によって、バカリ文は、夾雑物を許容することができるが、単に限定を意味するダケ文では夾雑物は許容されないということが指摘されてきた。[菊地(1983)]等
(8) 机の上に置いてあるのは鉛筆と消しゴム{だけ/ばかり}です。
(9)のようにある事柄について許可を与える文では、夾雑物が許容されにくくなるので、バカリ文は不適切となる。
(9) 机の上に置いていいのは鉛筆と消しゴム{だけ/*ばかり}です。
「探索」して見つかるということなので、バカリには「存在」という意味が出てくる。一方で、単に「限定」を意味するダケには「存在」という意味がない。
(10) 僕の周りの友人は天才{*だけ/ばかり}だから自分が惨めになる。
バカリ文は、「探索」の結果、高頻度であることに対して、話者が「またか…」と、うんざりしているようなマイナス感情を受け取ることができる。
(11) a. 昨日の会議は山田さんばかりが発言していた。
b. 弘美は赤い服ばかり着ている。